令和7年度「さがみはら生物多様性シンポジウム」を開催しました。
令和8年2月21日(土曜日)相模原教育会館大会議室において、さがみはら生物多様性ネットワーク設立10周年記念事業「さがみはら生物多様性シンポジウム」を開催しました。
基調講演・活動事例発表の動画を公開しています。
第1部 基調講演
「生物多様性の保全から再生へ―ネイチャーポジティブの実現に向けて―」

講師:坂田 昌子さん(一般社団法人コモンフォレスト・ジャパン理事)
つまり、ケヤキを1本伐るだけで、600種の生き物がいなくなります。木は光合成をして作り出した糖分を菌根菌というキノコの仲間にあげ、菌根菌は菌糸を伸ばして地中の栄養分を集めて木に手渡すという共生関係があります。森の地面の下には、広大な菌糸の森が広がっています。菌糸によって1000分の1ミリほどの穴がたくさんあいています。雨が降った時にこの穴にゆっくりと水がしみこんだり、毛細管現象によって水があがってきたりして、木のまわりで水は複雑な動きをします。これを保水力と呼んでいます。こうした目に見えないつながりを理解することが、自然の回復・再生のためには不可欠です。
かつて、草刈りは夏に伸びた草を冬枯れしてから刈り、大事な窒素分として田畑の肥料にしていました。草が生えているとそこは虫の住処になり、その虫を食べる虫や鳥がやってきます。彼らは蚊やカメムシ等を食べる等、人間にとっても良い働きをしてくれます。また草は地面から水を吸い上げ、葉の水孔から水分を空気中に返しています。雨が降らなくても、朝露のように、地面が乾かないように保湿をしてくれます。
伝統的な方法を使って、自然を回復・再生させることができます。例えば、シガラです。これは、杭と枝、落ち葉を組んで、斜面の水の流れをゆるやかにします。すると、湿地や水路が再生し、あっという間にモリアオガエルが戻ってきて、やがてホタルも帰ってきた地域もあります。水がゆっくりと流れることによって斜面の崩壊を防ぐことができ、人間にとっても安心です。そして、乾いた湿地が再生され、かつて生えていたツリフネソウ等の植物が再び生い茂り、その植物の蜜を求めて、マルハナバチがやってくるようになりました。工事をしなくても、人の手によって自然を再生することができました。
兵庫県豊岡市では田んぼの水を冬でも抜かず農薬を使わないといった管理を行うことでコウノトリの野生復帰に成功しました。一度は絶滅し消えてしまったコウノトリが空を舞っているという風景を地域の子供たち当たり前のように受容しています。相模原市にとっての文化や暮らしの営みとは何なのか、私も考えていきたいですが、単に昔に戻ればいいということではなく、都市とそういった生物多様性豊かな里山風景がミックスすれば、とても魅力的なまちになると考えています。宮本常一という民俗学者の言葉で「それぞれの地域に住む者がその土地を真に愛し、その土地で生きのびてゆこうとするとき、その環境もまた美しくゆたかになってゆくものではあるまいか」というものがあります。経済的、効率的だけを優先して人は生き延びていけるのか、自然保護さえすれば生き延びていけるのか、この二択では答えはでません。だからこそ、ネイチャーポジティブという人と自然の関係を再生する道が大事ということです。
第2部 活動事例発表
「相模湖・若者の森づくりとSTEAM教育」

NPO法人 緑のダム北相模
相模湖にある森で間伐活動を行い、切った木を使って公共施設で使用するチラシラックを作る等の活動をしています。私たちは中学生のころから活動に参加しており、シカの増加による食害が社会問題なっていることや間伐している森林の植生が回復しない現状から、先輩たちの調査を引き継ぐ形でシカの調査を1年間行いました。
植物が再生しないのは環境要因があるのか調べるため、植物が多く生えているところと少ないところの光量や土壌水分量を測定し、比較しました。その結果どの地点においても、植物の生育に適する環境があると判断できました。そのため、間伐後も下層植物が僅少である原因にはシカ等の野生動物の食害であると考えました。
次にシカがにおいを嫌うとされているマツカゼソウとサンショウを同じ山の別地点から移植し、定点カメラから移動経路を考察しました。移植エリアへのシカの侵入率の変化を算出したところ、侵入率は約72%減少しました。よって、シカが忌避するとされている植物を移植することでシカの移動経路が変わる可能性があり、食害削減につながるのではないかと考えられます。
次にシカの個体数の変化について、定点カメラの撮影データを分析し、シカの個体数を昨年と比較しました。ある地点では頭数が減り、また別の地点では頭数が増えたことから、生息する範囲に食性の影響があるのではないかと考察しました。また、今年は秋に多く観察されましたが、これも食性が主な原因と考えています。
最後にシカの食害削減に向けて提案です。マツカゼソウ等シカが嫌う植物を植えるとシカがそのエリアを避けたことから、山の麓にシカが嫌う植物を植えることや、ネットが張ってあるところはシカが入らなかったため、畑の周囲にはネットを設置すること、またシカが食べる植物を山の麓に植えないことによって、下まで降りてこないようにできるのではないかと考えました。今後、広範囲で継続的な調査を行い、効果的な対策を考えていきたいです。
NPO法人緑のダム北相模は、子供たちの相互関係や参加者、指導者が対等に輪の中で一緒に活動する、指導者は支援をする側であるという教育のかたちをとり、森をテーマに活動しています。いろいろな参加者がいて、目的や興味も様々です。また、間伐した木でデジタル技術を活用してモノづくりも行っており、デジタルファブリケーション(デジタルモノづくり)という、先進的な取り組みもしています。ぜひ相模湖に来て、活動に参加していただければと思います。
「人を育てる水族館へようこそ!学生が主役の北里大学水族館」

北里大学海洋生命科学部 北里アクアリウムラボ教授
三宅 裕志さん
北里アクアリウムラボは、学生が最初から最後まで作る水族館です。なぜここに水族館があるのか、なぜここにその展示をしないといけないのかを学生が考え、その過程で学生を育てたいという方針で水族館が作られています。
当初、北里大学海洋生命科学部は岩手県大船渡市にあり、2011年5月にミニ水族館を開館する予定でしたが、3月に東日本大震災が発生しました。5月に海洋生命科学部は相模原キャンパスに移り、学生たちが会議を重ねて、その夏に小規模なら水族館を開館しました。大学で研究していることの窓口となるよう、研究成果を人にわかりやすく伝えるという、他の水族館にはない特徴をもった水族館を学生たちが考えました。そして、2012年秋に現在の北里アクアリウムラボがMB館の玄関に完成しました。
アクアリウムラボでは、大学の調査や研究の展示をしています。例えば、三陸沖の深海でゴミの調査をした際に回収した空き缶についていたクラゲのポリプを育て、そのクラゲの展示をしたりしています。また、海洋生命科学部の魅力を伝えるために、毎年オープンキャンパスに向けて学生たちが企画を考え、展示を行っています。卒業生とのつながりも大切にしており、10周年の際には水族館に務めている卒業生の協力のもと水族館展を開催しました。
次に地域連携です。水族館と連携し、希少種等を育て、種の保存や調査研究につなげています。また、相模原市民桜まつり等、地域のお祭りにミニ水族館を出展したり、小学校において学生たちが水族館の仕事についてやSDGsについて授業を行ったりしています。
展示ができるまでに学生たちは、まず企画書を書くことからはじめます。なぜそれを展示するのか、どのように展示するのか方法を考え、予算も考えさせます。そうして作った展示をオープンキャンパス等で見てもらい、学生たちはお客さんに紛れてその反応を見ます。そして、反省をして次の展示に活かします。
水族館の運営を通して、社会に出てから自分のしたいこと、任されたことをチームの中で形にできる人を作っていくのが北里アクアリウムラボです。ぜひ、お越しください。
アンケートにご記入いただいた質問への回答を掲載します。

過去のシンポジウムの様子は次のリンクページをご覧ください
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